ことば遣い
おじいちゃんは、丁稚奉公でした。
まだほんの子どものときに上京して働き始め、
仕事仲間は映画や遊びに夢中なのに、
「1年に1回、きむらやのあんぱんを買う」
それだけを楽しみに
一生懸命、頑張ったそうです。

(ハンガリーのセーチェニ温泉。温泉に入りながらチェスをする人が見えますか?)
やがて、おじいちゃんは
小さな会社を任されるようになりました。
おじいちゃんと同居していたcarerは、
まだとても小さいころ
よくおじいちゃんが、お店の若い衆を連れてきては、
お酒をご馳走していたのを
覚えています。
若い衆は、赤くなった顔で、
おじいちゃんに、こんなことを言っていました。
「社長、尊敬しています!俺、ずっとついていきます!」
派閥がある、というのでしょうか、
特殊な職業でした。
一族の長が、仕事以外に無能では
社員が恥ずかしい思いをする、という気遣いもあったのでしょうか。
書が書け、唄が唄え、舞が舞える人でした。
おじいちゃんがいつも座る座布団や、お湯のみ茶碗は、
家長の品格に溢れていて、
おじいちゃんがいないときでも、
触れるだけでも、とても緊張したものです。

(ブダペストの夕食は、中世料理の「サー・ランセロ」で。)
やがて、おじいちゃんは、
アルツハイマーになりました。
最初は自転車で事故をおこすようになり、
徐々に、同居の家族の顔を忘れ、
夜間徘徊し、
家の中へ放尿・放便、
2階から飛び降りる、などの
この病気にとって典型的な行動を、起こすようになりました。
家族は介護疲れから病となり、
介護施設には利用を断られ、
ついには病院に入院することになりました。
小学生のときです。
carerは家族とお見舞いに行きました。
そこには看護士さんが居て、
carer家族を見ると、おじいちゃんに
こう言いました。
「ほら、太郎さん(仮名)!ご家族が来て下さったわよ。
起きなさいよ!」
「まったく、ダメね、ぼーっとしちゃって、
このあいだはおメメをぱっちりあけてたのにねえ。」
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あのときの憤りを、carerは忘れない。
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(ハンガリーのお土産は、手作りのとても可愛いものが多かったです。
これは、ハンガリーの家に1つはあるという、「ミシュカ」。)
血のつながったcarerでも、
おじいちゃんの食器を持つ、それだけで
緊張した、そんな尊敬する人に、
ただの一介の看護士が、
なれなれしく、下の名前で、
幼児語で、諭すように、話している。
今なら分かります。
看護士という職業が、
どんなに素晴らしい仕事をしているか。
だけど、
「お客様」となってからのその人は
認知症などの病気で頼りなく見えても、
家族にとっては尊敬する人で、
その気持ちが分からない人に
介護士や看護士に、なって欲しくない。
この業界、
お客様へのことば遣いが悪いと、
自分の首をしめます。
気をつけましょうね。






















